百錬ノ鐵

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都条例改正案は「BL漫画撲滅法」?

(2010年12月16日 加筆修正)

 9月13日に開かれた第604回東京都青少年健全育成審議会において、

 「青少年に与える影響としては男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくない」
 「同性愛を奨励するのは法律的にどうなのか」

 ……といった発言がなされたという噂が流れている。
 このことから、今回の都条例改正案を「BL(ボーイズラブ)漫画撲滅法」であるとする論調が(主にmixiで)目に付くようになった。
 だが言うまでもなく、改正都条例が施行される予定の来年7月までの審議会は、現行の都条例に基づいて進められる。もし件の発言が事実なのだとしたら、“改正”するまでもなく都条例はすでに「BL漫画撲滅法」として機能していることになる。
 そこで、当日の議事録を参照してみる。

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/604/604gijiroku.pdf

 「不健全図書類」の候補として挙げられた156誌の内から、BL作品『GUSHmaniaEX』を含む4誌が諮問されている(結果的には4誌とも「指定」となった)。

○青少年課長 (前略)1番の「GUSHmaniaEX 特集 勃たない」は、指定やむなしの意見が14名中2名、指定非該当が11名、関連会社であるという理由で意見表明なしが1名でございます。指定やむなしの主な意見は、「男性器の描写が卑わい」などでございます。指定非該当の主な意見は、「ボーイズラブ」は大人の女性やマニア向けである」、「男性器の描写はリアルだが、著しく性的感情を刺激するとは言えない」などでございます。(後略)

 そして、以下に示すのが「同性愛者差別」と見做された件の発言の全文である。(以下、強調は筆者)

○■■委員 2番、3番、4番は、今までと同じで本当にセックス描写が多くて指定やむなしですけれども、1番のここに書いてある男と男のラブストーリーといいますか、そういう意味で、絵だけ見たら男女の卑わいさというのは私としては余り感じないのですけれども、青少年に与える影響としては、男女より男と男のラブストーリーのほうが法律的にはよくないのかなと。それを奨励するというのはいけないんですかね。日本の法律としてはどうなんだろうと今考えてしまったんですけれども。
○会長 法的にですか。
○■■委員 この絵と漫画の内容を見たら、1番はこれと同じように保留でいいかなと私はちょっと思いました。

 ご覧のとおり、当該の発言をした【委員】は「男と男のラブストーリー」の法的正当性について“確認”をしているにすぎない。しかも、当該BL作品の「指定」に関してはむしろ〈保留〉の立場を取っている。
 また、他にはこのような発言もなされている。

○会長代理 以前、DVDで男性同性愛のDVDがあったときに、指定したのですが、男性同性愛だから指定したのではないということは確認してくださいという発言をしたことがあったんですけれども、逆の意味で、ボーイズラブだから指定しないというのは、むしろ同じ意味でちょっと。同性愛を扱っているから指定する、指定しないというのを考慮に入れるのはいろいろと問題が生じると思いますので、ここは区分陳列すべき内容かどうかというので考えれば、4誌とも指定ということで結構です。

○■■委員 何人かの方がおっしゃいましたけれども、男女の性交であると不健全で、男性同士だと不健全でない、こういう尺度はあり得ないと思いますので、性交の様子を描写し、あるいは性器を非常に明確に描き、その行為をリアルに描写しているということにおいて、これは全誌指定しなければ一貫性が保てないと思います。

○会長 (前略)これは、事務局の方で最初に説明していただいたとおり、ボーイズラブ云々ということではなくて、用意に手に取れる場所に陳列されてあったというようなご説明で、再度事務局で検討した結果、諮問に上げたというご説明で承っております。(後略)

 つまり、都の方針としては同性愛表現も異性愛表現も“平等に”俎上に上げるということ。それを、あたかもBLおよび百合の規制に特化した「BL漫画撲滅法」であるなどと騒ぎ立てるのは、勇み足か、はたまた恣意的な印象操作と判断するほかないだろう。
 もとより、そのことと「表現規制」の是非が別問題であることは言うまでもない。