百錬ノ鐵

百合魔王オッシー(@herfinalchapter)の公式ブログです。

作品評

「百合」でなければ《レズビアン差別》は許される?~榛名千紘『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』改題をめぐって #さんかくラブコメ

2022年3月10日。KADOKAWA主催「第28回電撃大賞・金賞」に入選した『百合少女は幸せになる義務があります』が『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』と改題、さらには作者名やキャラクター名まで一新し、電撃文庫から刊行された。 これまで、公式ページの…

「百合作品」を“全否定”する榛名千紘『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』は「電撃文庫」の汚点 #さんかくラブコメ

2022年3月10日、「第28回電撃大賞・金賞」を獲得した神奈士郎『百合少女は幸せになる義務があります』が『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』に改題され(併せて作者の名義も「榛名千紘」に変更)、電撃文庫から刊行された。 それに先立ち1月7日、電撃…

【まとめ】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

ブログに先立ち、Twitter上で『琴崎さんがみてる 俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様』(五十嵐雄策・著 弘前龍・原案 KADOKAWA電撃文庫 ※なお本稿では「原案」の弘前龍を「原作者(作者)」と位置づける)に対する批判を投稿していたところ、 《百合…

【追記】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

さて、これまで『琴崎さんがみてる』について異性愛至上主義・男尊女卑という観点から批判を展開してきた。 ここへきて、新たな視点を提示してみたい。 それは、そもそも「百合萌え」とは何なのか? という今更ながらの根本的な疑問である。 繰り返し述べて…

【総括※ネタバレ有】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

これまでの検証を通して『琴崎さんがみてる』が「百合作品」ではなく、あくまでも「百合」をダシにした異性愛至上主義のラブコメディである事実が明らかとなった。 しかし、そうなると新たな疑問が湧くであろう。 「男女のラブコメディ」と割り切って読む分…

【後編※ネタバレ有】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

これまでのおさらい。 YouTubeで公開されていた百合アニメ『琴崎さんがみてる』は、その小説化にあたり、主人公が「百合」を愛でる女性(琴崎入愛=イリア)から、その女性に恋愛感情を抱く男性(新堂瑛人)に変更されたことで、百合コンテンツのユーザーか…

【中編・下】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

すでに発売前の時点で“炎上”している小説版『琴崎さんがみてる』だが、版元のKADOKAWA「電撃文庫」の公式ページにある宣伝文では、次のように記載されていた。 dengekibunko.jp 俺は百合が好きだ。 隣にいる、琴崎さんも好きだ。 名門お嬢様学校が今年から共…

【中編・上】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

あらためて説明すると『琴崎さんがみてる』とは、 名門女子校に通うお嬢様キャラの【琴崎イリア】が、校内の女性カップルを見て百合妄想に耽るというという「メタ百合」とも呼べる構造のアニメ作品(※ただし声優が声を当てているものの静止画なので「漫画」…

【前編】まさに「クィア・ベイティング」の見本のような『琴崎さんがみてる』は異性愛至上主義の下に「百合」を貶める“男尊女卑”ラブコメディだ! #琴崎さんがみてる

YouTubeで公開されていた百合アニメ『琴崎さんがみてる』が、その小説化にあたり、 「百合」を趣味とする女性の主人公から、その女性キャラクターに恋愛感情を抱く男性を主人公に変更したことで、 作品の世界観を根底から覆す結果となり、百合コンテンツのユ…

同性愛者差別を追認する「ファンタジー作家」の貧困な想像力~まえ葉『みこへんげっ!』 #きらら #まんがタイムきらら

【きららキャラット4月号】まえ葉先生「みこへんげっ!」るいなと幼馴染のらんは、幼いころからひそかに想い合っていた仲。でも親の意向でらんは別の相手との婚約が決まってしまい、心が悪鬼に巣食われて…。今回は、淡くてちょっとビターなお悩み解決をお届け…

「百合」の“源流”は「エス」にあらず~『マリみて』を中心とした「百合史観」の試論

(2023年7月29日 加筆修正) 『百合特集』で注目を集める早川書房「SFマガジン」2021年2月号では「百合SF」の他にも、『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』(彩流社)の著者である嵯峨景子が、吉屋信子や伊澤みゆきに象徴される戦前の少女小説に関する…

「レズビアン」に保守的な《女の幸せ》をお仕着せする『彼女のカノジョ』の“無責任”

(2022年4月21日 加筆修正) 私の帰属する百合マンガの文化において、女性同士の恋愛は、きわめて肯定的ないし自然な事柄として描かれることがとっくに当たり前になっている。 かつては《友達以上恋人未満》にとどまる関係性がもてはやされ、今でもそのよう…

BL映画『窮鼠はチーズの夢を見る』尾崎世界観のフィルムレビューに残る「違和感」

三吉彩花のグラビア目当てで購入したマガジンハウス「an・an」2020年9月16日号に、今月11日公開のBL映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(行定勲・監督 水城せとな・原作)の特集記事が掲載されていた。 その中で、クリープハイプのボーカリストで作家の尾崎世…

現実社会の「倫理」を乗り越える、藤本タツキ『妹の姉』の“主眼”と“目線”

藤本タツキ『妹の姉』|少年ジャンプ+(2019年5月2日配信) https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156652911821 この漫画のシチュエーション――妹が姉のヌードを無断で絵の題材にし、しかもそれが賞を獲り学校に掲示される――が、けしからん(あるいは、…

「同性愛」だって人間の愛の形であることに変わりはない~『あさがおと加瀬さん。』をめぐるホモフォビア言説の表出

(2018年6月8日 追記) 原作を読んだ際の印象について訊かれた高橋は「オーディションを受けるときに原作を拝読したんですが、百合作品と聞いていましたが、読み終わったあとは、人と人との恋愛ですごく素敵な話だなと感じました」と語った。 『あさがおと加…

性別二元制と異性愛至上主義に囚われた『性別のない世界の話』の薄っぺらさ

Twitter上で右腹(@sgin001)という同人作家が発表した『性別のない世界の話』という漫画が、4万件以上のリツイート(いいねは13万件以上)を経て私のTLに流れてきた。 『性別のない世界の話』というくらいだから、てっきりクィア理論やジェンダーフリーの…

『けいおん!』が“志向”するアセクシュアリティと、「処女萌え」の“消費”

アセクシュアリティ(無性愛)は「性的指向」のパターンとして位置づけられるが、本稿は『けいおん!』の登場人物のセクシュアリティを分析したものではなく、作品自体のテーマや世界観を読み解く意味で、表題ではあえて“志向”という言葉を用いた。 『けいお…

『けいおん!』に「政治的正しさ」を押しつける“意識のお高い”馬鹿ども

https://twitter.com/yokoching/status/607380686136344577 艦これ、けいおん、ラブライブ、アイマス、これら全部、日本でしか許されていない性的変質者の愛玩文化ってことを理解しておいた方がいい。クールジャパンとかかわいいは正義とか、何を言っても未…

あらためて問う。「同性愛」を“治療”するとはどういうことなのか?〜きただりょうま『μ&i みゅうあんどあい』(2)

前回: 《ゲイ治療》の“可能性”を肯定する「ディストピア」は作者自身の差別意識の反映にすぎない〜きただりょうま『μ&i みゅうあんどあい』(1) http://d.hatena.ne.jp/herfinalchapter/20150315/p1 その後『μ&i』においては「恋愛少数派(セクシャル・マ…

《ゲイ治療》の“可能性”を肯定する「ディストピア」は作者自身の差別意識の反映にすぎない〜きただりょうま『μ&i みゅうあんどあい』(1)

(2015年3月19日 加筆修正) きただりょうま@4/3 μ&i 3巻発売 @R_Kitada https://twitter.com/R_Kitada/status/573065449673342979 今日発売のジャンプSQ.4月号にμ&i第11話が載ってるようです。色々はっちゃけてる回ですが、よろしくお願いしますー 今年3月…

百合好きが異性愛至上主義を批判するのは《百合が好きだから》ではない。

(2016年12月29日 加筆修正) 前回: 「禁じられた世界」という記号性に「百合ぷる」を閉じ込める「(自称)百合スト」の異性愛至上主義 (2013年12月25日 加筆修正) http://d.hatena.ne.jp/herfinalchapter/20130217/p1 以前、当ブログで取り上げた@nazo_n…

レズボフォビアとバイフォビアを再生産する「文学」の装い〜雛倉さりえ『ジェリー・フィッシュ』

今週末に公開される金子修介監督の新作映画『ジェリー・フィッシュ』が女同士の恋愛をテーマにしているというので、その原作である小説を読んでみた。主人公の女子高生【宮下夕紀】と、その恋人で嗜虐癖をもつバイセクシュアルの【篠原叶子】の儚い恋模様と…

「漫画の都合」で〈被差別者〉を振り回す『聲の形』大今良時インタビュー

(註 連載開始前の読み切り作品を読んだ時点の感想であり、連載およびアニメ版や実写版を含めたその後の展開については述べていません。あらかじめご了承ください) 前回: 障害者を“記号化”する健常者の「レイプ・ファンタジー」〜大今良時『聲の形』 http:…

『R18!』はなぜつまらないのか

ぷらぱ『R18!』は、『かなめも』や『落花流水』で知られる芳文社の4コマ誌「まんがタイムきららMAX」の主力作品の一つである。 私が同誌を定期購読するようになったのは『かなめも』のTVアニメ化が決定した時期(2009年春)だったが、その頃からす…

【ネタバレあり】障害者を“記号化”する健常者の「レイプ・ファンタジー」〜大今良時『聲の形』

(註 連載開始前の読み切り作品を読んだ時点の感想であり、連載およびアニメ版や実写版を含めたその後の展開については述べていません。あらかじめご了承ください) 【衝撃作】 週刊少年マガジン(12号)の特別読切「聲の形」(こえのかたち)は必読です。とにか…

「禁じられた世界」という記号性に「百合ぷる」を閉じ込める「(自称)百合スト」の異性愛至上主義

(2013年12月25日 加筆修正) なぎこ@百合愛づる姫君?@nazo_nagon_ https://twitter.com/nazo_nagon_/status/299156417376550912 ところで先日話題になった百合表紙のカメラ目線について思ったことをイラストにしてみた。業界の人にぜひ見てほしい。百合スト…

「コバルト」新人賞の“ヘテロセクシズム(異性愛至上主義)”的百合小説〜桜田エミ『お嬢様のお守り袋』

『マリみて』の新刊が今月末に出るという。何か具体的な情報は得られないものかと思い、書店で「Cobalt」(2012年5月号 集英社)を手に取ったところ、たまたま「第157回コバルト短編小説新人賞」の結果と、その入選作品が掲載されていた。 入選作品は桜田エ…

差別表現は「倫理」の問題に非ず〜石田大喜『実らない花』

特種東海製紙株式会社が主催するペーパーアートの大会「紙わざ大賞」の第21回入賞作品が、今月15日から17日にかけて東京・銀座の十字屋ホールにて展示されていた。 http://www.tt-paper.co.jp/kamiwaza/ http://www.tt-paper.co.jp/kamiwaza/pdf/21_shinsa.p…

「ゲイ映画評が浮き彫りにする「ヘテロ男」のホモフォビアと、その正当化のレトリック

「映画がもっとおもしろくなるハリウッドチャンネル」内 『甘くなくて厳しい「シングルマン」は腐女子&BLものに一石を投じる』 (著:森直人) タイトルを見て「また紋切り型のBL叩きか」と思いきや。その内容はもっと酷い。 ジャンルで言うとボーイズ・…

『ベスト・キッド』をダシに「母子家庭差別」を正当化する映画評論家

前田有一の超映画批評『ベスト・キッド』より抜粋(強調は筆者) なお「ベスト・キッド」は、母子家庭の限界をさりげなく描いたドラマでもあり、男の子を育てるために父性は絶対に必要なのだという、きわめて保守的な思想をもつ作品である。オリジナルでは女…