百錬ノ鐵

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次長課長の「人生相談」にかこつけたゲイ当事者への「ヘイトスピーチ」

(2023年12月28日 タイトル変更・加筆修正)

雑誌やラジオなどの企画で、芸能人が一般人からの「人生相談」に答えることがある。

切実な悩みであれば専門のカウンセラーに当たるべきで、真面目に受け取るようなものでもないのかもしれないけれど、

気になるのはそうした「相談」の中に、しばしばLGBT絡みの案件が混じっていることだ。この手の「相談」は、回答者の側にセクシュアリティや人権の知識がなければ、おのずとヘイトスピーチに陥ってしまうのがオチだ。

KKベストセラーズ「月刊サーカス」内で、お笑い芸人コンビ「次長課長」が、そうした「人生相談」の連載をもっており、

今号(2009年3月号)の「相談」の中にゲイ当事者からのものが含まれていた。

以下、全文引用する。

次長課長の(株)OH! NO! 人生相談 第11回』より(P.67)
 
相談者(29歳・SE):
僕はゲイなんですが、同僚の男性を好きになってしまいました。彼はノンケで男性に興味はありません。カミングアウトをして告白したほうがいいんでしょうか? 毎日思い悩み、つらいです。
 
井上:
告白したらダメでしょう。芸能界でこそおネエ系とかいますが、一般にはまずいないじゃないですか? だから、相手が困るようなことはやめたほうがいいと思う。
 
河本:
告白してもしなくても、結果、実らぬ恋ですよ。それなら今の友達のまま楽しくやったほうがええやろな。友達のふりして「ふざけんなよ〜」とか言いながらボディタッチして「よし、きょうはヒザ触ってやった」とか(笑)
 
井上:
最終的には連れションが目標になるんでしょうね。
 
河本:
いずれは「お前、ゲイちゃう?」ってバレるやろうけどね。
 
井上:
宮川大輔さん的なね。
 
河本:
大輔さんはゲイです(キッパリと)! 本人は否定してますけど、その境界線たるやガラス細工ですよ。デコピン程度でパリ〜ンいきますから(笑)
 
井上:
でも、そのゲイキャラを確立するというのは、意外と有効かもしれないね。
 
河本:
「ゲイちゃう?」言われたら「アホ言え〜」言いながら、またチンコ触るとかね(笑)
 
井上:
「男も女もイケるよ」みたいなね、ニオわし方がいいでしょうね。まあ、本当は男だけなんですけどね。
 
河本:
ゲイをニオわすと、女性の友達が一気に増えるやろうしね。もしかして食わず嫌いなだけで、意外と女性もイケるかもしれないですし。「めっちゃうまいやん!」ってなるかも分からへん(笑)
 
井上:
深刻な顔でゲイをカミングアウトして周りを困惑させるより、まずはそのニオイだけでも伝えてキャラにするほうが、周りにやさしいと思いますね。
 
河本:
きれいに〆た! ほな、また!

マジョリティである異性愛者が、マイノリティである同性愛者の立場や心情を“理解”することは難しくても、せめて寄り添うことくらいはできるだろう。

しかしながら上掲の回答は、マイノリティへの寄り添いも人権感覚も完全に欠落した、さながら“負の模範解答”と呼ぶべきものである。

開いた口が塞がらないとはこのことだが、それでも一つ指摘しておくとすれば、

ゲイをカミングアウトすることについては反対しておきながら「男も女もイケるよ」バイセクシュアリティ(両性愛)を“ニオわす”ことは奨励するダブル・スタンダードからは、

けっきょくのところバイセクシュアルであっても異性と同性を天秤にかけたら異性を選ぶはずだ》という異性愛至上主義に根ざした偏見が透けて見える。

このような事例は、まさしく人生相談」にかこつけた、ゲイ男性およびバイセクシュアルに対する「ヘイトスピーチと言っても過言ではない。