百錬ノ鐵

百合魔王オッシー(@herfinalchapter)の公式ブログです。

恩田陸の性差別発言に抗議します。(1)

 今月18日、「コミック百合姫」で連載されている硝音あやの百合漫画『EPITAPH』と、「コミック百合姫」の姉妹誌「コミック百合姫S」の最新号(Vol.4)が発売されました。
 とらのあなで購入すると先着順に作家のメッセージ・ペーパーが付くというので、先週の金曜、たまたま仕事が早く終わったこともあり、さっそく秋葉原まで足を運びました(千葉県にはとらのあなの支店がないのです)。
 途中で雷を伴った雨が降り出し、最悪の買い物日和。これでメッセージ・ペーパー付属分が売り切れていたら救われませんが、無事に入手できました。

 帰りに、他にもチェックしていない百合漫画はないかと物色していたら、ふくやまけいこの『ひなぎく純真女学園』が目に留まりました。
 帯には、作者にとって本作が「初の百合もの」であるという紹介に合わせて、百合の花のイラストを背景に「男子禁制」の文字。さらには作家の恩田陸が、下記の「推薦文」を寄せています。

男子なんかに萌えさせない! この可愛さ、分かるのは正しい女子だけ!!

 この恩田の発言を、僕は明らかな性差別であると考え、本日、『ひなぎく純真女学園』の掲載紙「COMICリュウ」(刊:徳間書店)の編集部に抗議のメールを送りました。
 ところが、「COMICリュウ」の公式ホームページに掲載されているメールアドレス(comicryu@shoten.tokuma.com])にメールを送信したところ、エラーが生じてしまいました。現在、版元である[http://www.tokuma.jp/:title=徳間書店]にメールで問い合わせをしている最中です。

 今後の経過につきましては、当ブログ上にて逐次お知らせいたします。

 以下、「月刊COMICリュウ」編集部に向けて送信したメールの内容を転載します。

月刊COMICリュウ編集部御中
 
はじめまして。当方『なぜ男が「百合」にハマるのか?』というサイト(http://zakuro-no-mori.jp/yuriyarou.htm)を運営しております、28歳の男性異性愛者です。
 
ふくやまけいこ先生の単行本『ひなぎく純真女学園』の帯に掲載された、恩田陸氏の推薦文について、ご意見を申し上げます。
 
「男子なんかに萌えさせない! この可愛さ、分かるのは正しい女子だけ!!」
 
漫画制作のプロフェッショナルの方々に今更申し上げるまでもありませんが、作者の理想がどうあろうと、あらゆる作品は世に送り出された時点で作者の手を離れ、読者にその解釈が委ねられるものです。作者や一部のファンがそれを拒むのは、独占欲にすぎないと言えます。
 
ましてや、ふくやま先生ご自身がそのような主張をなされているのならともかく、その推薦者である恩田氏になぜ読者を差別する権利があるのか、大いに疑問を感じました。
 
そもそも恩田氏が仰る「正しい女子」とはどういう意味なのでしょうか。百合=同性愛は、現代の日本社会において「正しくない」と見做されております。「正しい女子」であれば誰しもがレズビアニズムに共感できるということはありません。さんざん思い悩んだあげく勇気を振り絞って同性の友人に愛を打ち明けたとたん、「信じられない! 私を今までそんな目で見ていたの?」などと心無い言葉を浴びせられ、心に深く傷を負った当事者の方は少なくないのです。
 
また恩田氏は、生物学的性別と性自認がかならずしも一致しないということついてはどうお考えでしょうか。たまたま両者が一致する“女子”だけを「正しい」と決め付けていらっしゃるのであれば、それはトランスジェンダーの方々に対する差別以外の何物でもありません。
 
なお、性自認性的指向の概念につきましては、下記のサイトもご参照ください。
「セクシュアル・マイノリティって何?」
http://www.kktoyama.jp/kktoyama/sexuality/sexuality.html
 
「つまらないことにいちいち目くじらを立てるな」と仰るかもしれませんが、恩田氏の発言に代表される明らかな性差別に対して、異論の声を上げることすら許さない社会こそが、「正しくない」とされているセクシュアリティの可視化を妨げているのです。恩田氏の発言は、一見「百合」にシンパシーを寄せているように見せかけて、そのじつ「百合」が差別される土壌を肥やしているにすぎないのです。
 
月刊COMICリュウ編集部の皆様にも、どうかそうした実情に目を向けていただきたく、僭越ながらこうしてメールを送らせていただきました。できましたら、お手数ですが恩田氏にもこのメールを転送していただければ幸いです。
 
最後になりますが、恩田氏の主張に反して、私も『ひなぎく純真女学園』を拝読いたしました。世間では同性愛に対して未だに「ヘンタイ」「禁断の愛」などという偏見が根強い中、ふくやま先生は主人公「アミ」の「ユイ」に寄せる恋心を、じつに健康的かつユーモラスに描いていらっしゃいますね。男性嫌悪的なニュアンスは微塵もありませんし、むしろセクシュアリティの違いを越えて幅広く支持されうる百合漫画の傑作であると感じました。
 
しかしそれだけに、恩田氏の「推薦文」が読者に不適切な先入観を植え付ける内容となっているのが非常に残念です。ぜひご一考をお願い申し上げます。
 
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(Ossieの本名)
(Ossieの住所)
(Ossieのメール・アドレス)
(Ossieの電話番号)
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(2008年7月2日 追記)

 上掲抗議文における下記の箇所について、誤解なきよう補足しておきます。

また恩田氏は、生物学的性別と性自認がかならずしも一致しないということついてはどうお考えでしょうか。たまたま両者が一致する“女子”だけを「正しい」と決め付けていらっしゃるのであれば、それはトランスジェンダーの方々に対する差別以外の何物でもありません。

 これは、けっしてトランスジェンダーが「正しい女子」ではないということではなく、「正しい(正しくない)」と決めつけること自体が差別であるという主旨です。