百錬ノ鐵

百合魔王オッシー(@herfinalchapter)の公式ブログです。

《レズビアンを男とキスさせる動画》に関する「GENXY」編集部からの回答(1)および再反論

本日21時36分、「GENXY」の編集者を務めるゲイ当事者のイラストレータUechi Makito(上地牧人 Twitterアカウント:@makikidz氏より回答がありましたので、以下に転載します(原文ママ)。

オッシー様
 
記事へのご指摘・ご連絡ありがとうございます、GENXY編集部です。
 
当媒体の記事スタンスとしまして、国内外のLGBT関連ニュースを、エンタメ&ライフスタイルを軸にセレクトして展開しております。
 
近年、海外のLGBTユーチューバー&YouTubeチャンネルが台頭しており、LGBTをテーマにした社会的問題を扱ったものから、エンタメ性のある動画まで多岐に渡って展開されています。
 
また、これらは当事者内に賛否両論を巻き起こす動画(本件で仰られてるような類)が存在するのも事実です。
 
当媒体では、これらの動画をメディアという立場から肯定・否定せず、コンテンツを見られたユーザーがどのような見解を持たれるかどうかはユーザーの判断に委ねています。
 
以下、ご指摘を踏まえ具体的に説明させて頂きます。
 
1「ぎこちないやり取りの中、キスをする姿は男女ともにキュート」という表現について
 
動画では、出演を了承したレズビアン&ストレート男性が終始和やかなムードであることが伺えます。
 
また、レズビアンだけが「ぎこちなくてキュート」という意味ではなく、記載どおり"双方"が「キュート」という表現でございます。
 
同様に、「ゲイとノンケ女子がキスしたら…?」記事でも「キュート」という表現が当てはまると考えており、レズビアンのみを捉えた差別的意図はございません。
 
2「本来、惹かれることはない異なる2人」という表現について
 
「本来、惹かれることはない異なる2人」という表現についてですが、これは動画に出演する2者を端的に表現したものであり、編集に差別的意図はございません。しかし、断定的かつ誤解を招く表現であったことを受け、「セクシャリティの異なる2人」という表現に変更させて頂きます。
 
LGBT当事者向けの当媒体が、なぜこの動画を取り上げたのか?
 
ご指摘されている動画は、当媒体だけでなく各国のLGBTメディアにて取り上げられています。以下主なリンク先の記事をご参照下さい。これら記事に差別的表現があるかをご判断下さい。(もし差別的表現を感じられるのであれば、各メディアに対し異議を唱えて下さい)
 
・英Pink News
http://www.pinknews.co.uk/2015/12/23/watch-lesbians-try-kissing-men-and-its-as-awkward-as-you-think/
 
・米OUT誌
http://www.out.com/popnography/2015/12/23/watch-gays-kissing-girls-lesbians-kissing-dudes-awkwardly-adorable
 
・英Attitude誌
http://attitude.co.uk/watch-gay-men-try-kissing-women-for-first-time-in-painfully-awkward-video
 
・AfterEllen
http://www.afterellen.com/people/467327-lesbians-kiss-straight-men-really-awkward-video-experiment
 
4動画の総評
 
動画内での出演者の言動&リアクションから見てお分かりになる通り、「出演を了承したレズビアン&ストレート男性が終始和やかなムード」でキスを終え、最後は当事者(レズビアン)が、「やっぱり私はレズビアンだ」と確信するというリアクション動画です。それを視聴したユーザー(現在YouTubeで200万回再生されています)と出演した側も「そりゃそうだよね」という認識で終わります。そこに差別性、性的搾取、性的消費の意図はないと我々は判断しています。
 
記事の取り下げについて
 
上記の理由から、一部誤解を招く表記については訂正をさせて頂きますが、記事取り下げに関してはご遠慮させて頂きます。
 
もし、動画内容に強い憤りを感じるようでしたら、動画制作側(The Human Experiment)に直接異議を申し立てて下さい。
 
何卒宜しくお願い致します。
 
GENXY編集部

以下、私の再反論:

* * *

ご回答ありがとうございました。しかし腑に落ちない点が多々ありますので再反論いたします。

>当媒体では、これらの動画をメディアという立場から肯定・否定せず、コンテンツを見られたユーザーがどのような見解を持たれるかどうかはユーザーの判断に委ねています。

《当媒体では、これらの動画をメディアという立場から肯定・否定》しないとありますが、貴方自身も認めておられるとおり《ぎこちないやり取りの中、キスをする姿は男女ともにキュート。》という表現は動画の内容をきわめて“肯定的”に評価するものであり、「ユーザーの判断」をそのような「見解」に誘導することは矛盾しています。

>また、レズビアンだけが「ぎこちなくてキュート」という意味ではなく、記載どおり"双方"が「キュート」という表現でございます。

【双方】の立場性の非対称を完全に無視しています。

〈男性異性愛者〉が〈異性(女性)〉と擬似的恋愛行為(接吻)を行うことは性的指向に反しませんが、〈女性同性愛者〉が〈異性(男性)〉と擬似的恋愛行為(接吻)を行うことは性的指向に反します。

〈男性異性愛者〉と〈女性異性愛者〉のペアであるなら、この動画のコンセプトは成立しないはずです。すなわち動画の狙いが、まさしく前回私が指摘したとおり、

【男性との恋愛および性行為の経験が未熟であるとされるレズビアンの女性】に対して、あえて男性との擬似恋愛的行為(接吻)を要求し、なおかつその際のレズビアンの“ぎこちない”反応にエロス(かわいらしさ)を見いだすというもの

……であることは明白です。

ゆえに、〈男性〉の側の反応について「キュート」であると評したところで【双方】の立場性の非対称が解消されることはありません。

>ご指摘されている動画は、当媒体だけでなく各国のLGBTメディアにて取り上げられています。以下主なリンク先の記事をご参照下さい。これら記事に差別的表現があるかをご判断下さい。(もし差別的表現を感じられるのであれば、各メディアに対し異議を唱えて下さい)

私は、他ならぬ「GENXY」の同性愛者(非異性愛者)に対する無自覚の「差別意識」を問題にしているはずですが、なぜ「各国のLGBTメディア」に論点をずらそうとするのでしょうか? 「各国のLGBTメディア」の反応が、「GENXY」の記事の内容とどう関係あるのでしょうか。

「各国のLGBTメディア」の反応がどうあろうと、貴方たちは貴方たちの信念に基づいて見解を述べ、記事を作成する権限があります。そこで「各国のLGBTメディア」に責任を転嫁するとは主体性の放棄に他ならず、情報を発信するメディアとしてあまりに無責任な態度と言わざるをえません。

>動画内での出演者の言動&リアクションから見てお分かりになる通り、「出演を了承したレズビアン&ストレート男性が終始和やかなムード」でキスを終え、最後は当事者(レズビアン)が、「やっぱり私はレズビアンだ」と確信するというリアクション動画です。

これが、後日「GENXY」にて紹介された『レズビアンが初めて男のペニスを触ってみると…?(動画)』の動画のように、「レズビアン当事者」自らが自己のアイデンティティを確認するべく主体的に制作した動画であるなら、特に抗議の対象とはなりません。

翻って「The Human Experiment(記事中には「ヒューマン・プロジェクト」とありますが、これは間違いでしょうか?)」による一連の動画は、制作者の立場も制作の経緯もなんら明確にされていません。

よってそれは「レズビアン当事者」自らが自己のアイデンティティを確認するべく主体的に制作した動画とは異なり、あくまでも「非当事者」が「レズビアン当事者」に対して、自身の性的指向に反する〈男性〉との擬似的恋愛行為(接吻)を要求することによって、その「リアクション」を楽しむというものとして機能しています。

>それを視聴したユーザー(現在YouTubeで200万回再生されています)と出演した側も「そりゃそうだよね」という認識で終わります。そこに差別性、性的搾取、性的消費の意図はないと我々は判断しています。

繰り返しますが《差別性、性的搾取、性的消費》の機能性は制作者の「意図」とは関係なく、作品を成立せしめる社会的構造によって規定されます。

「The Human Experiment」による一連の動画は、レズビアン女性とゲイ男性という性差の違いこそあれ、〈同性愛者/異性愛者〉の力関係の差異を利用し、〈同性愛者〉に対して〈異性愛者〉との擬似恋愛行為(接吻)を要求する点で共通しています。

加えて《現在YouTubeで200万回再生されてい》るという単純な事実は、作品が内包する《差別性、性的搾取、性的消費》の諸要素を回避ないし正当化するものではありません。

「多くの人」が支持していることを理由に《差別性、性的搾取、性的消費》がないと判断するのは、《差別性、性的搾取、性的消費》の基準をマジョリティが決めるという発想であり、マイノリティに対する《差別性、性的搾取、性的消費》の構造が維持・強化されることになります。

>もし、動画内容に強い憤りを感じるようでしたら、動画制作側(The Human Experiment)に直接異議を申し立てて下さい。

一連の差別的な「動画内容」について“強い憤り”を感じるか否かは、私個人の内面の問題ですので、見ず知らずの貴方に干渉される筋合いはありません。

また《動画制作側(The Human Experiment)に直接異議を申し立て》るか否かは、私自身が判断することですから「直接異議を申し立てて下さい。」などと貴方に指図される筋合いもありません。

元より私が問題視しているのは、一連の差別的な「動画内容」を無批判に“肯定”する「GENXY」の態度ですから、そうした「GENXY」の主体性に帰属する問題の責任を【動画制作側(The Human Experiment)】に求めるのは筋違いです。

ただ、私の指摘を受けて《本来、惹かれることはない異なる2人がキスすると》との表現を改められたことにつきましては感謝いたします。

記事自体の削除に応じていただけないとのことでしたら、併せて《ぎこちないやり取りの中、キスをする姿は男女ともにキュート。》との文言も削除していただけますよう改めて要請いたします。

以上、前回に引き続き今回のメールに対するご回答もブログ上で公開させていただきます。よろしくお願いいたします。